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2017/12/14

「検事はひまわりに~」の小ネタ

めっちゃ久しぶりにブログにあらわれ、なんやなんやって感じですが
ファイル整理をしていたら「検事はひまわりに嘘をつく」の小ネタが発掘されたのでアップします。

お礼ペーパー用に作って没にしたものなので非常に短いです。
なんで没だったんだかな…視点ころころしてたのと、藤野辺と弓瀬いっしょにいるシーン短かったからかな。

安定の弓瀬×藤野辺 と、愉快な事務官。
弓瀬が「金原」とかいってますが、書き始めた当初、このお話は弓瀬視点だったので、弓瀬の事務所の職員全員名前もキャラもきまってたんですよね。
なので弓瀬と大学同期で、弓瀬が父親の事務所をついでボッチになったとき、ちょうどフリーだったから入所してくれたという設定でした。
口うるさいおかんタイプで、藤野辺と二人きりで部屋に放置すると、弓瀬の糖分接種対策法案を二人で可決しそうな弁護士でした……。

小ネタは続きからどうぞ~



 何か落ちている。
 アスファルトの歩道にぽつりとついた黒い点を見て、そう思ったとたんに、その黒い点はところせましと増殖しはじめた。はっとして、ビルのひさしの下から空を見上げると、雨のふりだした灰色の空が広がっていた。
「うわ、本当に降ってきた。こりゃ金原に感謝だな」
 思わずそう呟いた弓瀬の鞄の中には、幸い折りたたみ傘が一本、出番を待ちわびていた。
 祝日の午前を仕事で過ごした弓瀬が、クライアントと打ち合わせたあと直帰する、と言って事務所を出たところで、スタッフに「夕方は雨かもしれない」といって無理やり持たされたのだ。朝は、一足早くきた真夏のような日差しだったものだから、傘なんて鞄の重しにしかならないと思っていたのだが。
 スーツの袖を指で押し上げ、弓瀬は時計を見た。
 そろそろ約束の時間だ。今日は藤野辺も休日出勤で、せめて夕食はのんびり外食でもしようかと、このビルで待ち合わせることにしていた。
 待ち合わせ場所を指定したのは藤野辺のほうだったが、駅から多少離れたこの場所では、雨を避けて駆けつけることは不可能だろう。
 少し心配になって、わけもなくあたりを見回す弓瀬だったが、その背後から雨音に紛れて穏やかな声がかかった。
「おや、弓瀬弁護士じゃありませんか? こんなところで奇遇ですね」
「あれ、三枝さんじゃないですか。本当に奇遇ですね」
 振り向いた先にいたのは、ビルの中から出てきた藤野辺の相棒だった。
 相変わらず、人生で一度たりとも腹を立てたことなどないかのような笑顔の三枝は、軽く弓瀬を見上げ、そして次に、その視線を外にやった。
「困りましたね、藤野辺さんの言ったとおりだ、本当に降ってる。弓瀬さんも雨宿りですか?」
「いえ、俺は待ち合わせですよ」
「というと、もしかしてうちの藤野辺とですか?」
 合点がいった、とばかりに目を瞠った三枝に、弓瀬も思わず苦笑を浮かべた。
「そうです。三枝さん、さっきまで藤野辺と一緒だったんですね」
 うなずく三枝に、弓瀬はほっとした。もともとこのビルに用事があるから、待ち合わせ先に指定したのだろう。ならば、藤野辺が雨に濡れる心配もなさそうだ。
「藤野辺なら、まだ三階にいますよ。担当の事件で、刑事課の方と打ち合わせがあったので」
「そりゃ珍しい。ややこしい話にならないといいんですが」
「藤野辺が法廷に立つ以上、どんな証人もあの人よりややこしい存在にはならないでしょうから、大丈夫だと思いますよ」
 にこりと微笑まれ、弓瀬は微笑み返した。
 この二人、うまくやっているんだかいないんだか。と、不安になってしまう。
 しかし、藤野辺が法廷でややこしい男だという点については、弓瀬としてもフォローのしようがないのでいかんともしがたい。
「そ、それにしても、せっかくの休日に雨やら仕事やら、大変ですね」
「そういう弓瀬さんもお仕事では? お疲れ様です。もっとも、今から藤野辺と会うのならもっと疲れそうですけれども」
「ははは。大丈夫ですよ、俺、体力には自信がありますから。藤野辺の一人や二人、どんとこいです」
「それはよかった。今日、藤野辺さんご機嫌斜めなんです」
「あちゃあ……。でもまあ、あいつ口は悪いけど、八つ当たりする奴じゃないから大丈夫かな」
「言われてみれば。あの口の悪さのせいで、うっかり見逃してました。弓瀬さんは……本当にあの人と仲がいいんですね」
「ええ、幼馴染ですから」
 実質、子供時代のつきあいはゼロに等しいのだが、幼馴染という単語はカムフラージュには最適だ。
 それに騙されてくれたのかどうかはわからないが、三枝は再び雨に濡れる街に目をやると覚悟を決めたように一歩足を踏み出した。
「では、その幼馴染パワーに期待します。実際、あの人は弓瀬さんの話をすると機嫌がいいですし。男二人だと華がないのが難ですが、どうぞよい週末を」
「あっ……待ってください」
 一瞬にして、三枝の革靴が濡れはじめたのを見て、弓瀬は思わずその肩を掴んでいた。
「なんですか。藤野辺の不機嫌をなおす秘策とかは、生憎持ってませんよ」
「だから、それは大丈夫ですって。それよりも三枝さん、もしかして藤野辺のやつ、今日雨が降るのを知ってたのなら、傘持ってるんじゃないですか?」
 そんな推測への返事も待たずに、弓瀬は鞄の中から折りたたみ傘を取り出し広げはじめる。きょとん、としてこちらを見つめる三枝に、広げた傘をさしかけてやるまであっという間だ。
「ええ、傘、お持ちでしたよ。あの……?」
 頭上に広げた傘の下、弓瀬は三枝に負けない笑みを浮かべるとあっさりとその柄を相手の胸に押しやる。
「だったら、藤野辺の傘に入れてもらいます。三枝さん、どうぞこの傘持っていってください」
 こともなげなその言葉に、三枝は一瞬呆けた顔をすると、呆れたようにつぶやいたのだった。
「さすが、あの人の暴言につきあえるだけのことはあるお人好しぶりですね」

 二度遠慮したのち、三枝は弓瀬の傘を手に帰っていった。
 ほんの数分の他愛ない話。けれども弓瀬は、嬉しかった。三枝ははっきりと「藤野辺は弓瀬の話をすると機嫌がいい」と言っていたではないか。
 自分の知らないところで、藤野辺が弓瀬のことを話題にしているのかと思うと中学生の初恋でもあるまいに、胸が弾む。だが、そのときめきはあっさりと、不機嫌そうな声にかきけされた。
「弓瀬弁護士は、三枝事務官とえらい仲良しやな」
「お、藤野辺。用事もう終わったのか?」
 振り返ると、どうやら三枝とのやりとりを見ていたらしい藤野辺が、杖のように傘に体重をかけた格好でこちらを睨み据えていた。
 相変わらずのオールバックに氷の面貌と、スレンダーなスーツ姿。そのくせ口からこぼれる不良ぶりが、今となっては愛しいばかりだ。
 つい、へらりと笑った弓瀬を前に、藤野辺の眉間の皺が増えてしまった。
「あんな毒舌事務官とようにこにこ長話した上に傘まで貸せるもんやな」
「ははは、なんか嫉妬みたいだぞ藤野辺。あんまり可愛い顔するなよ」
「アホ! し、嫉妬とかとちゃうわ! ただ、弓瀬が三枝の微笑に騙されてるようやから、ちょっと忠告したろうと思っただけで……」
 藤野辺が耳まで赤くなった。図星をさされて恥ずかしいと同時に、三枝の言ったとおり、確かに今日はちょっとばかりご機嫌斜めのようだ。
 最初から聞かされていたせいか、眦つりあげてつまらない文句を言い募る藤野辺がやけに可愛く見えて、弓瀬は藤野辺の頬にそっと手を伸ばした。赤く上気した頬を撫でると、とたんに藤野辺が文句も忘れて息を飲む。
「文句なら、お茶でも飲みながらゆっくり聞くよ。とりあえずここは雨も散るから移動しよう。ってことで、傘貸してくれ、藤野辺」
「は、あ? ……傘貸してて、お前今三枝さんに……」
「ああ、三枝さんのおかげで、俺今傘持ってないから、堂々とお前の傘で相合傘ができるだろ?」
 親切顔で折りたたみ傘を三枝に押し付けた弓瀬の脳裏に、最初からあった野望。
 そのことにようやく気付いたらしい。藤野辺の白い頬がさっと羞恥に染まる。
 藤野辺は、大きな黒い傘を照れ隠しのように乱暴に開いた。そしてその体が一歩、雨の中へと踏み出すと同時に藤野辺の手は弓瀬の袖をひく。
 甘えるように傘の下に踏み込むと、傘に雨粒のあたる音が、二人の世界を包み込んだ。
「あほ、もっとくっつけ。濡れるやろ」
「はいはい、検事様のおっしゃるとおりにいたします」
 そういって藤野辺の腕に絡み付くと、二人の姿をけぶらせるように、雨脚はさらに激しくなるのだった。

終わり

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2016/03/29 小ネタ

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