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2017/10/23

朝輝の「あ」は「あの人どこで頭ぶつけたのかしら」の「あ」

こんにちは!
ルチルさんから二冊目の文庫「ショコラは夜に甘くとける」が発売されて、そろそろ一か月になります。
何してんのこの攻め……的な攻めが相変わらずな小話ができたので
こちらでアップさせていただきますね。
小話をお読みいただくには、このブログの末尾にある「つづきはこちら」をクリックしてください

「ショコラは夜に甘くとける」のほうは、ぎりぎりまで二人とも揉めていた
というか、受けの九条がものわかりのいいふりを続けていたので
「君が好きだよ!」「俺もだよ!」からのラブシーンがとても短かったんですよね
なので、今回の小話では九条が「お前どんだけ朝輝が好きやねん」とハリセンで突っ込みたくなるほどのろけさせておきました。

また、ルチル文庫さんのほうでも情報公開されていますが
ありがたいことに、八周年フェアのほうに参加させていただけることになっており
その際の対象となる拙著が、今回の「ショコラは夜に甘くとける」になります
http://www.gentosha-comics.net/event/rutile8.html(公式ページ)
その際も、ラブラブな二人を書かせていただこうと思っていますので
楽しみにしていただけると嬉しいです。

また、忘れたころに宣伝させていただくかと思いますが
よろしくお願いいたします。

小話、楽しんでいただけるといいのですが~





 夢の終わり、うつらうつらと自分が覚醒しようとしていることを、意識のどこかが理解している不思議な感覚に九条はうっとりと漂っていた。
 人に甘えるのは得意ではないし、感謝の気持ちを心のままに表現することもそう上手いほうでもない。
 だから言葉にこそしないものの、内心九条は朝輝の部屋のベッドを大変気に入っていた。
 日曜日の朝は、案外朝ホストの利用客は多い。
 しかし、朝輝との出会いで気持ちに少しゆとりができた機会に、休める時間を作ってみることにした一日目。
 九条は、土曜の夜に朝輝の部屋に泊まりにきて、ここ数年で初めての「ゆっくりした朝」をじっくり味わっていた。
 売り相手の男とホテルで目覚める朝でもなく、客のメールで目覚める朝でもない。
 かつて、朝輝に発展場で助けられて以来、一季節ぶりに訪れた朝輝の部屋は相変わらず丁寧に片付けられていて、一人暮らしの男の部屋とは思えぬ甘い香りが漂っていた。
 誰かと、淫らな夜を過ごし、そのまま朝を迎えることを気恥ずかしく思うような純情さとは無縁のつもりだったのに、いざこうして好きな男の部屋で、好きな男のベッドで愛し合う時間は、慣れているはずの九条を赤面させたものだ。だが深夜、二人でシャワーを浴びて再びベッドでつまらないことをささやきあいながら眠りに落ちる瞬間は、素直に至福のひと時だと思えた。
 一時間前、ふと目を覚ましたときは、ちょうど朝輝と向きあうような体勢で、九条はとろける意識の中、たっぷりその寝顔を見つめながら二度寝に陥ったのだが、今、傍らには誰もいない。
 しかし、慌てることなく九条は呑気なあくびを一つこぼすと、布団の端をかきよせた。
 ふかふかだ。
 まだ、少し暖かい。
 すぐ頭側に窓があり、狭いベランダからは二月の冷たい空気とともに、明るい陽射しがたっぷりふりそそいでくる。朝輝は、起きてからさっそくカーテンを開けて、どこかへ行ったらしい。トイレかキッチンか、考えるよりも先に九条は朝輝がいないうちにしかできないだろうベッドの独り占めを味わうことにした。
 九条の生活は決して不潔なものではないが、しかし毎日酒浸りで、自宅に戻るのも数時間……となると、布団の世話などおざなりだ。そもそも部屋のカーテンを開けること事態皆無に近いため、たいして体に馴染んでもいない布団はこれほど柔らかくもないしいい匂いもしない。
 その上、朝輝の体温まで残っているとなれば貴重なふかふかだ。
 ぎゅっと布団に顔をうずめ、マメにあらっているらしいシーツの感触も楽しむ。
 グレーの布団カバーのいたるところに指先を這わせ、ざらりとした布の感触に九条は頬が火照るのを感じた。
 いつも、朝輝がここで寝ているのだ。仕事をして、帰ってきたらここで寝て、そして朝になると真っ先にカーテンを開けて一日を始める。
 その、彼の生活の一部分に自分が今溶け込んでいることがくすぐったくてたまらない。
 このまま、朝輝の布団の感触に溺れながら三度目の眠りにつけば、彼の夢を見られたりしないだろうか。
 怠惰な誘惑にかられながらも、九条は何度か寝返りを打つと、ようやく上体を起こした。
 すると、今度は自分の身に着けたパジャマの青が視界にちらつく。
 仕事を終え、そのまま成り行きでここまで来たが、朝輝が嫌でなければ自分のシャツのまま寝るつもりだった。しかし、それでは体が休まらないだろうから、といって朝輝のパジャマを貸してくれたのだ。
 カレパジャマに胸をときめかせたなんて話、同僚にのろけられれば高校生かと揶揄してやるところを、まさか自分がこんなことでドキドキする日がくるとは……。
 とにかく、朝輝の部屋に泊まるということは、何かにつけ甘酸っぱく、そして心くすぐられることに満ちていた。
 前ボタンの、上下揃いの青いパジャマだなんて、いかにも朝輝らしくて笑いがこみあげてくる。
 この調子では、朝輝の前でも顔が緩んだまま、いつもの態度はつらぬけそうにないな。と自分の緩んでばかりの頬を手の平で押さえながら、九条は三度寝への誘いを断ち切るようにベッドから降り立った。
 そして、ようやく気づく。
 衝立変わりの箪笥の向こうにはキッチンが見える。その、大きな冷蔵庫の前に朝輝が屈みこんでいることに。
 単身者用の社宅というには、朝輝の部屋はそこそこ広い。
 ワンルームを箪笥で区切り、箪笥を挟んで今九条がいる側にベッドがあり、反対側はキッチンとリビング、という体裁が整えられている。広いかわりにクローゼットや収納の類のない部屋を、朝輝なりに工夫したらしい。
 だから、箪笥が邪魔になって、布団のふかふかを味わっているときは朝輝がすぐそこにいることに気づかなかったのだ。
 幸い、朝輝のほうも、九条が朝輝の匂いに包まれる喜びを味わっていることなど気づきもしなかっただろう。
 今さらのように恥ずかしくなって九条は頬を赤らめたが、ふと朝輝の様子に違和感を覚えてそっとキッチンへ向かった。
 かがみこんだ朝輝は、じっと開け放った冷蔵庫の中を見つめている。
 その表情は、とても心地よい朝にふさわしいものではない。
 紫麻家二十四箇条は、交際が始まって一週間目にコピーしたものをもらったが、丁重にシュレッダーにかけさせてもらった。だが、ふと見かけたルールの中には、節電節水の項目があったはずなのだが……。
「朝輝さん、朝からどうしたんです、冷蔵庫とにらめっこですか」
 冷蔵庫の冷気に冷やされたかのように青い顔をしていた朝輝が、おずおずと九条を見上げた。まだ、冷蔵庫の扉を閉める様子はない。
「おはよう、九条……」
「おはようございます。あの……」
 お礼が言いたかった。泊めてくれたお礼でもあるし、共に過ごしてくれた時間への礼でもある。
 それに、可愛い寝顔でしたね、なんて言ってからかってやりたかったし、何か休日の予定があるのなら手伝ってもやりたかった。
 しかし、まさかの朝輝の表情に、九条は思い描いていたすべての言葉を失い、立ち尽くすほかない。
 二人の間に訪れた沈黙を、ただ冷蔵庫の冷気が冷やし続けている。
「ごめん、九条」
 そういえば、以前もこうしてこの部屋で謝られたな。
 懐かしいことを思いだしながら、例えようのない不安に襲われた九条に、朝輝はなおも続けた。この世の終わりのような顔をして。
「嘘つく、つもりじゃなかったんだけど……そうだ、昨日急きょ試作品回収したいからって言われて、会社に戻したんだった……」
「朝輝さん……?」
 絞り出した声は、我知らず震えている。
 しかし、朝輝の声もまた震えていて、柔らかな日差しに照らされた室内がひどく暗い空気に包まれる。
「朝ごはん用のチョコレートがないんだ」
「……」
 いや、部屋が暗いと思ったのは気のせいだった。
 九条は一瞬にして不安を飲み込むと、眉根を寄せて冷蔵庫の扉に手をかけた。静かに押すと、朝輝の目の前で冷蔵庫の扉がようやく閉ざされる。
「すみません、朝輝さん。ちょっと寝ぼけていて、何がおっしゃりたいのかよくわからないんですが」
 すげない返事に、朝輝はすがるようにして立ち上がる。
 ふわふわの髪には寝癖がついて、お揃い同然のパジャマ姿はどこか可愛らしいのに、その表情だけは深刻そのものだ。
「ごめんな寝ぼけてるとこにこんな大事な話して!」
「いや……」
「よりにもよって、告白の誓いを破るなんて、俺最低だ……っ」
「……」
 くしゃりと顔をゆがめた朝輝からは、深い自責の念が感じられる。
 その表情から視線をそらすように、九条はちらりとベランダを見やった。
 壁にかけられた時計は八時を指し、夜明けというには時間が過ぎているが、しかし二人で迎える朝としては上出来の日差しにはコーヒー……もとい、チョコレートがさぞかし似合うことだろう。
「まさか、夜明けのチョコレートを一緒に齧る約束のことじゃないでしょうね、朝輝さん」
「……」
「……」
「俺、隣に行ってチョコレート借りてくる!」
「やめてください!」
 そもそも、この朝輝を相手に、ちょっと甘酸っぱいモーニングタイムに心躍らせた自分がバカだった。
 両隣も同じ会社の仲間だから、きっとチョコレートのストックあるよ。そう主張する朝輝を正座させ、とりあえず落ち着かせるために見たくもない紫麻家二十四箇条を引っ張り出してきて朗読させながら、九条は三度寝の誘惑を振り払った己の律義さをちょっとばかり後悔したのだった。


「九条、朝から悪かった。落ち着いたから朝ごはん食べにいこう。近所の喫茶店のチョコレートケーキ美味しいから!」
「もう、ややこしいので、夕べのことは予行演習だったと思いましょう。今夜も泊まって明日の朝仕切り直しです」
「ふ、ふしだらっ」
 なんだかんだいって、都合よく朝輝宅に泊まる口実を手にいれることだけは成功した。


終わり


惰眠をむさぼりたい。
あの、とろけるようなふわふわ眠いしこのまま寝てもいいんだという幸せの瞬間を少しでも長く味わいたいので
完璧に寝ているときは特別気持ちいい心地いい自覚がないのでもったいない気がしますね。

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2013/06/09 小ネタ Comment(0)

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