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2017/12/14

下手の横好き

「臆病者は初恋にとまどう」は、本編、おまけ、おまけ。という構成ですが
この最後の四ページのおまけは、私がうっかりページを余らせたため、書かせていただいたお話しでした。
なにかと行数増やすよりも、一つネタ書けてうれしかったのですが、その際まっさきに浮かんだのが
本のほうに入ってる「射手谷と同僚とビジネスホテルの一室」という川辺いじめ…
書き上げてからふと「あれ、これ射手谷と秋季のらぶ話じゃなくて、川辺の話じゃない!?」と青くなり
提出してから却下されては大変なので、とりあえずもう一つ用意してみたネタがあります。
幸い川辺ネタを入れてもらえたので、余ったほうのネタはこちらで公開したいと思います。
文庫ページ換算で四ページほどの短いネタですが、気になる方はぜひどうぞ!

射手谷と秋季のおばか小ネタは続きから おまけ◇下手の横好き

「もー本当さあ、下手くそすぎて勘弁してよって感じ」
「わかるわかるー。エッチ下手なくせに盛ってくるとかありえないよね」
 酒の配達で訪れたカフェバーで、裏口近くの席に陣取っていた女性客のそんな言葉が耳に飛び込んできたせいで、あやうく秋季は手にしたビールケースを落とすところだった……。

 自分のエッチは下手だろうか。上手い、ということは確実にないだろう。
 生憎男友達と盛り上がってセックス談義になったこともなければ、いかがわしい映像や写真も数えるほどしか見たことがない秋季は、自慰さえそう積極的にせずこの年まできたのだ。
 おかげで、いったい何をどうすれば「エッチが上手」ということになるのかさっぱりわからない。
「……い、射手谷は絶対、上手なほうなんだろうな」
 自宅に帰っても悶々と女性客の愚痴を思い返していた秋季の口から、そんな独り言がこぼれる。
 思い返せば射手谷に初めて接触したのは、いわゆるラブホテルの真ん前。
 あの日は川辺から、射手谷がデートするらしいと聞いて慌ててあとをつけたのだが、ホテル街というものはあんなに颯爽と歩くものなのかと、誰の視線も気にせず堂々といかがわしい施設に入ろうとする姿に未知の生物を見た心地だった。
 そんな射手谷と肌を重ねるようになって半年。未だに射手谷にリードしてもらってばかりのエッチ事情は、今日の女性客から見れば「ありえる」のか「ありえない」のか……。
 エッチの上手い下手はともかく、自分が射手谷に盛っている自覚はあるだけに、秋季の悩みは深刻だった。
 悶々と考え抜いたすえ、秋季は部屋の隅から一本のビデオテープをとりだした。
 すでにブラウン管テレビはただの物置と化しているが、ビデオならば見ることができる。
 昔アルバイト先の先輩に、粗大ゴミになる予定だったビデオデッキをもらったとき、古い映画のビデオも何本かもらったのだが、その中に一本だけアダルトビデオがあった。
 まだこの家に住み始めたばかりで若さの盛りだった秋季は、妹のいない時間を狙ってこっそり再生してみたのだが、妙に悪いことをしているような気になってすぐに見るのを止めてしまったのだ。
 今でさえ、発掘したアダルトビデオをデッキにセットする手は震えている。
「いや、ちょっと他の人はどんなことやってるのか見るだけだし……。俺が変なことやってないか、ちょっと確認するだけだし……」
 無人の部屋で、誰にともなく言いわけをしながら、秋季は再生ボタンをゆっくりと押した。
 かたかたと、ビデオデッキが久しぶりの出番に張り切った音をたてる中、テレビ画面には古ぼけた映像が秋季の後ろめたさを煽るように妖しく浮かび上がる。
 上手いか下手か、そんな不安が脳裏を駆け巡る中、次第に秋季は映像の中に映し出された淫らな場面に吸い寄せられるように前のめりになっていった。
「……」
 画面に映し出されているのは、間違いなく男と女の姿だが、震える肌もこぼれる嬌声も、不思議と射手谷との行為を思い起こさせる。
 あの余裕に満ちた、何でもできる射手谷が、秋季が触れれば身もだえ、熱欲を叩きつければ喉をひくつかせて喘ぐ。
 卑猥な記憶と、目の前の映像が絡み合い、秋季の指先は自然と己の股間へと延びていった。
 ジーパンの股間のあたりがきつくてたまらない。
 ちょっと、ジッパーを下ろすだけだ。
 そのつもりが、淫欲の色を深めていく画面から目が離せないまま、秋季の指先は自身の性器に触れるとそっとそれを取り出した。
 すでに、仕事先で聞いた女性客の愚痴などどこかへ飛んで行ってしまい、秋季の中にあるのは射手谷への想いと、火照りそうなほどの欲望だけ……。
 吐息をこぼし、ゆるゆると自分のものに指先を這わせようとしたその時だった。
 足元で携帯電話が急に賑やかなメロディを奏でだし、秋季は声にならない悲鳴をあげると飛びつくようにしてそれを手にして通話ボタンを押す。
「は、はい湯郷です!」
『秋季ちゃーん、今日もお疲れー。仕事終わってるよな、今ちょっと出てこれないか?』
「うわああああっ?」
 何も考えず、ただ慌てた勢いだけで出た電話の相手は射手谷だった。
 よく考えてみれば、仕事も終わった夜中に電話をくれる相手なんて射手谷しかいないのに、とにかく秋季はこのとき焦っていたのである。
 なにもかも見られてしまった気がしたし、アダルトビデオを見ながら自慰をしかけていたことに罪悪感もあった。
 その上、秋季の悲鳴に射手谷が電話の向こうで驚いている中、タイミング悪くビデオから「ああんっ」というそれは大きな嬌声が響いたのである。
「いやっ、ちがっ、これは今日の女の子が言ってたからっ、あう、ごめ、ごめん!」
 何を考える暇もなく、秋季の指は勝手に携帯電話の通話終了ボタンを押していた。
 数十分後。血相をかえた射手谷が深夜料金のタクシーを飛ばして駆けつけてきたことは言うまでもなく、アダルトビデオを見ていたこともしっかりばれてしまうのだった。



「秋季ちゃんは、うまいとか下手とか気にしなくていいんだぞ」
「……なんでそんな満面の笑顔なんだよ射手谷」
                                     おわり

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2013/04/01 小ネタ Comment(0)

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